「石けんは合成洗剤よりBODが高いから河川の汚染については合成洗剤より環境に良いとは言えない」といった論調が新聞などに掲載されたことがあります。BODだけで見ると確かにせっけんは合成洗剤の3倍です。 しかし、これは水質汚濁を「BOD」値にだけ限定した論議です。実は水質汚染にとってBODは全体像の一部にすぎません。

BOD(生物学的酸素要求量)とは、生物が分解するときに必要とする酸素の量の高さを示したものです。 微生物に分解されやすいものほどBOD値は高くなり、合成洗剤のように微生物に損傷を与える化学物質のBODは低くなります。 (石けんは微生物によって分解されやすく分解する時に酸素を使うので非常に多くの酸素を消費する、 対して合成洗剤は長期間分解されにくいので酸素消費が少なくなる) せっけんはすぐに界面活性力を失うので水生生物に悪影響を与えず、むしろ微生物のエサになります。 (石けんは水道水中のカルシウム、マグネシウムが結びつくと、水に溶けない金属石けんができる) せっけんの生分解性の高さは合成洗剤の比ではありません。BODは水質の有機物汚濁の指標であって、 洗剤の水質汚濁の指標にはなりません。BODと生分解性の両方を組み合わせた数値、ThOD(理論的酸素要求量)、 全炭素数などの指標などとあわせて評価する必要があります(エスケー石鹸/生活クラブHPより()は管理人が追記)

○下水処理の仕組み

@入ってきた下水の大きなゴミと小石や砂を取り除きます。沈砂池ポンプで下水を汲み上げて、最初沈殿地に送ります。

A最初沈殿地で下水を二時間程度緩やかに流して、更に細かいゴミや浮遊物を沈殿させます。

Bエアレーションタンクに微生物が含まれている活性汚泥を加え、空気を吹き込んで6時間ほど混ぜると、微生物が下水中の汚れ(有機物)を食べます。さらに微生物に下水中の他の汚れが吸着し沈殿しやすい塊となります。

C最終沈殿地で、ゆっくり水をまわし大きな塊となった活性汚泥を沈殿させ上澄みのきれいな水を取り出す。

D最終沈殿池の上澄み水は、塩素混和地で塩素消毒をし川へ放流します。

上記の工程を見ると、浄水処理の基本は『微生物の働き』だとわかります。処理場に流れ込む合成洗剤の濃度が5ppmを超えると 微生物が弱り処理濃度が著しく低下するそうです。水をきれいにする生物の働きを弱めたり、殺してしまう合成洗剤は 水質浄化の自然なサイクルを壊してしまうことになります。たしかに石鹸も大量に流せば環境に負荷がかかるのは事実ですが、総合的に考えて私は石けんの方が環境負荷が少ないといえるのではないかと思いました。